建設管理部に求められる役割は全体最適化、つまり“かゆいところに手が届く支援”なのだと思います。安心安全、品質、工期、コスト確保に向けた日々の業務は、時に設計者や施工者とのハードな協議を要することもありますが、そこでゼネコンで25年半にわたって施工管理を担っていた経験が、存分に生かされていると感じています。
弊社の品質管理は、ものづくりにおける立場は皆、平等であるという思想に基づいていますが、あくまで施工者を尊重することが大原則。そのため、必要であれば施工者側にとって耳の痛い助言も厭わず、プロジェクトを円滑に進める努力が欠かせません。結果的にそれが、前職とはまた違った達成感、そして自分自身の向上に繋がっていることを、日々実感しています。
折しものコロナ禍により、状況や環境は激変しました。そこで現在の環境下で発注者サイドにいっそう求められるのは、変化の先読みと対応力でしょう。パンデミックによって日本古来の押印文化の見直しが進められているように、何より重要なのはスピードです。もちろん私たちのプロジェクトに期限ありきのものですが、新規案件にも既存施設にも先端技術を可能なかぎり取り込んでいくなど、利用者の安心に配慮する姿勢は常に持って置かなければならないと思います。
大切なのは、時間に限りのある中でも、設計図や想定されたスペックにない付加価値を追求し、それを関係者と共に実現すること。そのために私自身も今、できるだけメーカーやゼネコンの関係者をヒアリングし、不具合や新規技術を深堀りすることで知見の積み上げに努めています。こうした時間の使い方は前職時代には考えられず、楽しみながら自己研鑽に励むことができることが、大きな喜びとなっています。
三井不動産エンジニアリングは、原則即戦力採用という特殊な組織形態により、多種多様な人材が集まっています。異なる文化の中でそれぞれが長年培ってきた技術を、ベクトルを合わせて活かす働き方が要求されますが、風通しの良い社風のおかげで自由闊達な議論ができ、いい形で各々の個性が発揮されているように感じます。
こうした中、人生100年時代を見据えてまだまだ学習し続けなければなりません。幸い、大好きな読書の時間を十分に確保できる環境なので、技術的なトレンドはもちろん、5年後、10年後、20年後の近未来に世の中がどう変化しているのか、多くの文献から情報を得て自分なりにイメージしています。今後は人口減少や自然災害リスクなども、発注者の在り方に影響を及ぼすことになるでしょう。まだまだチャレンジできる場面は多いはずです。